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パンデミックにおける食品業界のマーケット動向と

光学式選別装置における自動選別の取り組み

21 9月 2021

① はじめに:

2019 年後半より世界中を瞬く間にパンデミックに陥れたコロナウィルスの影響により、昨今、食品業界のマーケット動向にも大きな変化がもたらされている。外出制限があるなか、自宅での内職需要に加え、健康志向への需要がますます高まっている。

この中でも特にパンデミック以前の 2018 年より、国内を含め世界中で急速にナッツの需要が高まってる傾向がある。2018 年のみで世界的に実に24%もの生産量の増加があったが、まだまだ対需要に満たない状況であった。この急速なナッツの需要の高まりには、以下の5つの世界的な食のトレンドが深く関係している。
① 健康志向による需要
② ナッツミルクによる需要
➂ スナック製品としての需要
④ 発展途上国へのナッツの普及
⑤ 化粧品への使用

上記の世界的なトレンドを鑑みると、今やナッツの選別には従来型の選別ではなく、高品質で高い処理能力を誇る光学式自動選別機の需要が不可欠になっている。

② 4つの代表的なナッツ類に対する選別方式:

アーモンドの選別:

収穫したアーモンドは、外皮と殻を取り除きその後加工される。外皮を取り除き、包装されるまでの各々のアーモンドの加工工程で、選別対象を特化して選別している。

アーモンドにおける選別の第1段階は、異物や外皮、殻を除去することであり、この段階では高精度な選別は必要はない。ここでは、大きな異物や外皮、木片、殻を選別しながら速いスピードで処理することが目的である。この選別方法に最適なマシンは、自由落下式選別機 TOMRA 3C であり、1時間あたり20トン以上のアーモンドを選別する。ここでは外皮や石、殻、木片なので異物を 99.5%+以上の驚異的な選別除去率でほぼ選別することが可能である。

 

TOMRA 3C

 

アーモンドが、ナッツ加工業者へ入荷した後、第2段階として異物とアーモンドを分別する。この選別工程は、初期の段階で実施する場合、後工程で再選別する必要はない。この段階では、ベルト式X線選別機 TOMRA 5X で大容量のアーモンドを選別する。ここで TOMRA 5X は、最新のX線とAI機能を搭載したイメージング技術を取り入れ、石やガラス、高密度なプラスチックなどの異物を検知し除去する。

選別の第3段階では、小さな不良品と密度が低くX線選別機で見逃した異物を選別する。この段階では、まだプラスチックなどの異物は存在する可能性もあるが、選別対象の大半は外皮や殻、殻かぶり、小さな木片などの天然由来の異物、または同じラインで生産された別のナッツ類(ピスタチオなどの多品種)である可能性がほとんどである。

次世代の自由落下式光学自動選別機:5C-生体認証特性カメラ付き

この第3段階の選別では、次世代の自由落下式光学選別機5Cを使用する。

トムラソーティング株式会社の次世代型自動選別機は、1980 年代より弊社独自で開発した最先端のレーザー端末で幅広い異物及び不良品を識別・除去することが可能である。

プラスティックや金属などの人工的な異物はもちろん、特殊レーザーによってナッツ類のアフラトキシンの検知、水分や油分の含有差も識別することが可能である。特筆すべきは、自社で独自に開発した BSI 技術(バイオメトリックシグネチャ識別)により、物体をカメラでスキャンしその物性を特定し検出することが可能になったことである。

この技術により、従来は検知が難しかったナッツ類のカビや虫食い、ピンホール、ヤニ,小さな殻、未熟、皺などを高い歩留りを保持しつつ検知 & 除去することが可能である。この除去された不良品は、他の用途で使用され、ほとんどが化粧品用のオイルに再加工される。

TOMRA 独自の BSI+技術は、近赤外線(NIR)と可視スペクトル波長の両方で一度に製品をスキャンするため、この難しい不良を検知することが可能である。(添付図の動作原理参照)挿入>これにより、選別対象の生体認証特性とデータベースに格納されているデータを瞬時に比較し、エアガンで除去するか否かを判断する。この技術によって、腐れやカビ、アレルゲン、水とオイルの含有量などの重要なナッツの不良を検知&除去可能である。

その後、第4段階として、メカ式サイズ選別を実施した後、再度 TOMRA 5C のフルオプション仕様で除去が難しいピンホールや殻刺さりなどの非常に微細な不良品を選別する。

 

TOMRA 5C

 

アーモンドを市場に出荷する前には、最終的に割れ欠けや皮めくれなどの外的欠陥を選別する。この選別には、高解像度カメラによる360°ビュー搭載のベルト式光学選別機TOMRA 5Bを使用する。また、このマシンには、高度な形状アルゴリズムを使用した形状認識ソフトが組み込まれており、アーモンドの長さ選別も可能である。

TOMRA 5B で選別(排除)された製品は、純粋に外的欠陥によるもののため、別の製品として再加工される。

くるみ選別:

くるみには、非常に多くの異なるサイズ、グレード及び製品のタイプで販売されるため、

ナッツ類の中で最も複雑である。くるみの世界的な需要の高まりによって、これまで以上に大容量に選別処理し、同時に消費者からの製品の品質と食品の安全への期待が高まっている。また、製品規格も厳しくなってきている。以前は、ナッツの1トン内に最大 20 個の殻を含むことでOKでしたが、現在、多くの卸売業者が1トンあたり5個以下または場合によって1個未満が主流である。

これらの基準を達成するために、くるみはアーモンドのように通常6回以上の選別機で選別される。この多くの選別工程で排斥された製品が、食品原料やオイル、化粧品業界に使用するナッツの受け皿になっている。

最初の段階で、クラッキング前にX線選別機 5X にくるみを入れ、異物を除去する。サイズ選別と殻を分別した後、くるみは小さな殻を除去するため、自由落下式光学選別機  TOMRA 3C を通過する。その後、ベルト式光学選別機 TOMRA 5B で最終選別をする前に自由落下式光学選別機 TOMRA 5C で少なくとも3回選別をする。くるみは、非常に壊れやすく、破損は製品価値を損なうため、製品のハンドリングが重要である。

TOMRA 5C での1回目の選別では、BSI+ カメラ2基を付帯し、くるみ内異物やアレルゲン、殻を選別する。2回目の選別では、レーザー端末 2 基と BSI+ スキャナー1基を付帯し、かびやセプタ、皺あり、変色などの不良を検知 & 除去する。3回目の選別では、レーザー端末 2 基と BSI+ スキャナー1基を付帯し、客先の仕様にあわせた最終選別を実施する。(例:1トンあたり最大3個の殻までOKなどの製品規格にあわせる)

その後、必要であれば、ベルト式光学選別機 TOMRA 5B にて形状選別及び色を選別する。

ヘーゼルナッツの選別:

ヘーゼルナッツも食品の安全性と製品の品質を保持することは困難である。通常、ヘーゼルナッツは手摘み ですが、製品に混入する石やその他の異物を除去する必要があある。

第1段階で TOMRA 3C によって、木片や石、殻付きを除去する。その後、自由落下式光学選別機 TOMRA 5C で少なくとも2回選別する。一部の加工業者は、排斥したヘーゼルナッツをより低いグレードとして再加工している。

選別では、BSI+ スキャナー2基を付帯し、カビや皺、シミ、虫食いなどを検知 & 除去する。

これらは、TOMRA 独自の生体認証特性技術を使用することでのみ検知可能である。

ピーナッツの選別:アフラトキシンの検知&除去

ナッツ加工業者で直面する最大の課題は天然のマイコトキシンで発生するピーナッツのアフラトキシンである。トウモロコシや穀物または地面で発生するような植物の特定のアスペルギルス型(真菌)は、通常、畑で発症する。また、これはホットスポットで発生する傾向があるため、テストサンプルで常に発見できるとは限らない。この検知&除去には、デトックスレーザーを付帯した自由落下式光学選別機 NIMBUS にて選別可能である。TOMRA NIMBUS を特殊設計することにより、ピーナッツのアフラトキシンを発生する菌によって反射する極めて低い波長を識別し、除去することが可能である。

 

TOMRA Nimbus

 

➂トムラソーティング株式会社について

弊社は、1972 年に使用済の飲料容器のリサイクル用として自動回収装置の設計及び製造、販売からスタートしたトムラグループのグループ会社であり、常に革新的な技術に投資し、その利益の大半を研究開発に注いでいる。

今日の弊社のミッションは、資源回収を効率的に実施し、食品及びリサイクル、鉱物廃棄を最小限に抑えることが可能な選別技術によって、お客様に最適なソリューションを提供することである。

弊社の詳細情報については、弊社 www.tomra.com を参照ください。

④ おわりに:

食品業界にとって、この消費者や小売業からの製品の品質向上の強い要求が、現在、もう一方で大きな課題である。さらに食品加工業者には、世界的なコロナウィルスの大流行の影響下で、いかにコストを抑えるかが要求されている。

一方で、人件費や水、エネルギーのほぼ全般にわたり以前よりコストが高騰しているという問題もある。

特に人件費と水はますます不足しているのが実情である。発展途上国の労働者がより他の選択肢をもつようになるにつれ、その多くの労働者をあてにできない、もしくは手作業をいやがる傾向になっている。また、世界的な気候変動によって降雨の時期や水の入手経路を大幅に変わり、食物の成長とその収穫時期が大きく変動するため、食品加工業者はより変動する状況にすばやく対応する必要性がある。

さらなる課題は、食品の安全基準である。消費者はアレルギーや病原体、アフラトキシンについてSMSなどを通して、製品基準に対するクレームを直接発信するこが可能になった
。これにより、食品に混入する異物に対して、よりシビアな視点をもつようになっている。

この食品に混入する異物は多岐にわたるが、異物選別機械の性能に大きく由来するという側面がある。最先端の選別技術では、生産ラインから異物を検知して選別する以上のことを実施することが可能である。また、最新の選別機械では、労働力を軽減しかつ水の使用量を削減かつ食品の廃棄を最小限に抑えつつ歩留りを向上させることも可能である。また、食品のトレーサビリティを実現し、かつ最適な生産性で利益をあげることが可能である。食品加工業者様が現在直面しているこれらの課題の多くは、最新の選別技術によって解決することが可能であり、最先端の技術に投資すればこの高い競争戦略に打ち勝つことが可能である。